メルキオール・岩永 静雄師

1936(昭11)年〜1940(昭15)年
 

4 、 テキスト

 堅信式の準備には教理の勉強が欠かせない。教理の教科書は長崎では「公教要理」であったが、この頃まではたぶん日本長崎、早坂司教出版認可「公教要理」であったであろう。
 
公教要理、長崎県外海町「出津教会誌」より

 この公教要理はポケット版でそれを手にして勉強する者が暗記し易いようにキリスト教の教義が箇条書きに編修されて使用されていた。

  ここには当時の子供たちが使っていたテキストがないので1986年3月出版、カトリック長崎大司教区 「カトリック要理」から神、教会、信徒の生活、信徒の道徳生活、世の終末についての質問事項と答えを幾つか任意に拾って紹介しておくことにいたします。

1、 神について

  1、問い   神がおいでになることは、どのようにして
          分かりますか。
    
    答え   神がおいでになることは、自然界を通しても
         知ることが出来ますが、神のお示しに
                  よっ て知ることが出来ます。
 
  37、問い  時が来て、神は救い主として誰をお遣わし
         になりましたか。
     
     答え  神は、救い主として、ご自分の御独り子を
         お遣わしになりました。

  39、問い  人間となられた神の御子のみ名は何と
         申しますか。
     
     答え  人間となられた神の御子のみ名は、
         イエズス・キリストと申します。

2 、 教会について

89、 問い   イエズス・キリストは救いの業を続ける
         ために、どのようになさいましたか。
    
    答え  イエズス・キリストは救いの業を続ける
         ために、教会を創立なさいました。

 90、問い   教会と何ですか。

   答え   教会とはイエズス・キリストとその代理者に
        司牧される信徒の団体です。

 113、問い  教会の最も尊い任務は何ですか。

     答え   教会の最も尊い任務は、典礼、
          特に秘跡(ひせき)によって人々を
          聖化することです。

3 、 キリスト者の生活について

 252、問い  キリスト信者は、キリストの教えを信じる
         だけでたりますか。
     
     答え  キリスト信者は、キリストの教えを信じる
         だけでは足りません。さらに、
         神の子、神の 民にふさわしい生活を
         しなければなりません。

253、問い  神の子供にふさわしい生活とは何ですか。

    答え  神の子供にふさわしい生活とは、聖霊の
        導きにしたがって信徳、望徳、 愛徳を
        実行することです。

266、問い  愛徳とは何ですか。

    答え  愛徳とは、神をすべてにおいて愛し、
        また隣人を自分と同じように 愛することです。

271、問い  祈りとは何ですか。
    
    答え  祈りとは、心を神に向けて、神を賛美し、その
        お恵みを感謝し、 罪の赦しを願い、必要な
        お恵みを願うことです。

275、問い  いつ祈らなければなりませんか。

    答え  しばしば祈らなければなりません。
        とくに、典礼の間、朝夕、食事の前後、
        困難な誘惑のとき、また臨終の際に
        祈らなければなりません。
 
   278、問い  信徒は何を修めるよう召されていますか。

      答え  信徒はみな聖成を修めるよう
          召されてます。

 285、問い  信徒は聖成を修めるためにどのように
          しなければなりませんか。

     答え  聖成を修めるには、聖霊の導きに従い、神 
         の言葉を聞き、そのこころを 実行し、特に
         ミサ聖祭に積極的に参加し、祈りと節制に
         つとめ、 隣人への愛と奉仕に励まなければ
         なりません。

4 道徳生活について

286、 問い  神を愛するには、どのようにしなければ
         なりませんか。

     答え  神を愛するにはその掟を守らなければ
         なりません。

287 問い   おきてとは何ですか。

    答え   神がお定めになった道徳の規則です。

5 、 世の終末について

  396  問い  どのような霊魂が天国に行きますか。

       答え  恩恵の状態で死に、罪も罰もない
           霊魂が天国に行きます。

  398  問い  天国とはどのようなところですか。

       答え  天国とは三位一体の神を仰ぎ見て、
           その愛の交わりの中に永遠に
           生きることです。

 公教要理はキリスト信者をキリスト教生活に導くためのテキストです。キリスト教生活とはイエス・キリストを通して示された神の愛の教えに従って生きることであり、そのためには掟を守り、祈りの生活と秘跡を大切にすることが不可欠である。

 さらに、公教要理には私たち人間が持っている謎に対して、つまり、人は何のためにこの世に生まれて来たのか、人間としてどのように生きていけばよいのか、この私という人生はいつか終わりが来るが、その後、私は一体どうなり、何処へいくのか、ということなどの謎に対してはっきりとした答えがキリストの言葉、行い、教会の教えによって簡潔にまとめられている。つまり、人類に対しての神の愛と救いのご計画が示されている。

 キリスト信者の生活は、神の言葉を聞きながら、生涯人類の救いと愛のために生きられたイエス・キリストの模範に倣う生活にほかなりません。

 即ち、 聖霊とキリストの代理者との導きのもと、秘跡に強められ、主の復活に自分の復活の希望を託して、福音をひろめながら神の国に向かって前進する生き方です。

 このように、キリスト教の教義をまとめている「公教要理」は子供の信仰教育に役立つものであるから、意味していることを十分に説明させて暗記させなければならない。もしそうしなければ、正しいキリスト信仰を育てることは難しくなる。
 
 
明治初期の公教要理
慶応から明治にかけて、教え方は長崎大浦天主堂に行き教理を習い、それを写本にして各集落の信者達に教えた。(「出津教会記念誌」より
同上
日本最初の公認公教要理。
東京大司教区出版認可東京1896年
「下川英利著「教理書の変遷史」より
大正年間に使用された公教要理
「出津教会記念誌」より

 
 

5、当時の教え方名

 仲知地区の司牧はフレノー師が1885年頃、仲知と江袋に伝道学校を設立以来、伝統的に教え方が多く要理教育は盛んであった。

 この隆盛は明治後期から昭和40年ごろまで続いた。
岩永師のときにも各集落に伝道学校で養成された男女の教え方がいて子供の信仰教育に偉大な貢献をした。

 昭和12年8月25日、仲知教会で挙行された堅信式での180人の受堅者を指導した教え方は一体どのような方であったか知りたかったので、当時の堅信台帳に基づき調査してみた。


 
 
教会名 男子の教え方 女子の教え方
野首教会 白濱正男 白濱チマ
瀬戸脇教会 瀬戸好美 瀬戸ナセ
米山教会   川端チズコ、白濱 ミサ     
仲知教会 紙村藤松、山添直吉、  山下ジセ、久志キク
瀬戸ミキ、
江袋教会 楠本房吉 谷口ヤエ
赤波江教会 大瀬良キオ
小瀬良教会 小瀬良喜助 大瀬良ミキ
大水教会 大水正男 大水トミ
          
 
 赤波江教会と米山教会には男子の教え方がいなかったということではない。堅信前の3年間、それぞれの教会で男子の児童を受け持って指導された男子の教え方がいたが、堅信の代父役をしていないだけのことである。なお、米山教会の男子の教え方は白濱松次郎で、赤波江教会の男子の教え方は赤波江幸衛門であった。

 仲知教会では一本松と竹谷地区を担当する教え方と真浦と久志地区を担当する男女の教え方がいて、それぞれの地区の子供の稽古を受け持ってい た。 

 仲知・真浦と久志の教え方は最初山下ジセであったが、彼女が家族と一緒に長崎へ引越しされたことから代わりに久志キクがこの地区の教え方となり、堅信式のときは自分の教え子の代母役を務めている。

 女子の教え方は大方、奈摩内伝道学校の最後の卒業生となっている。彼女たちは卒業後、それまでの教え方がしてきたように、約3年間毎 日自分が受け持った約15人前後の子供たちに稽古をみっちり教えてこの堅信式に臨んでいる。

堅信式当日は、これらの若い教え方にとっても受堅者とその家族以上に大きな喜びであったことは容易に察しがつく。

 

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